
伊藤恵理博士へ聞いてみました!
『空の旅を科学する』(2016/9/5発売)はどんな本なのですか
「空の旅の裏側に広がる航空管制科学の世界を、文字どおり世界の空を旅しながら科学したわたしの研究の旅路を追いながら、臨場感たっぷりに描いております。」
初出版となりますが、執筆していく中でどんなことを感じましたか
「本の執筆は、自分の頭の中にある物語を原稿に書き出す孤独な作業だったけど、エージェントさんと編集者さんが伴走を始め、出版社のディスクや営業さん、イラストレーターさん、装丁デザイナーさん、校正班さんたちが登場して、本の出版はチームのプロジェクトなんだと教えていただきました。感謝!」
ぜひ多くの方に読んでいただきたいですね!伊藤博士からメッセージをお願いします。
「皆さまへ
2014年4月、NASAでの研究生活を終えて帰国したわたしは、この本の執筆を始めました。
「航空管制」、言葉を変えると「空の交通整理」の研究を、業界の垣根を越えて発信したいと思ったのは、2012年に故郷の京都で開催された「TEDxKyoto」というトークイベントでの登壇がきっかけでした。会場の皆さんが、意外なことに、航空管制の研究に興味を持ってくださっている。そういえば、「空の旅」はわたしたちの身近になったのに、その裏側に広がる科学の世界を伝えるメディアがないなあ。それならわたしが伝えよう。そこで、パリ、アムステルダム、シリコンバレーを中心に空を旅しながら奮闘した自身の10年間を辿りながら、臨場感のある空の旅の科学の世界を描こうと決めたのです。
そう決心して臨んだものの脱稿までにかなりの難産で苦しんだのですが、この本の執筆を通して、わたし自身も新しい気づきを得ることができました。それは、航空管制科学には、航空業界にとどまらず、わたしたちがこれから社会で直面する問題を解く鍵があるということです。21世紀は、コンピューターが人間の仕事を奪うほどにさらに高度化するといわれていますが、それではわたしたちは、その高度な自動化システムとどのように共存して働くことができるでしょうか? 航空管制の研究現場から問題提起したいと考えるようになったのです。
さらに本書には、読者のみなさんに科学者の世界に興味を持っていただきたい、という想いも込めています。科学者の言動は少し風変わりかもしれませんが、わたしは科学者ほど気持ちのいい人たちはいないと思っているのです。国境や組織を越え、世界に知的価値を生み出そうという使命感と科学で繋がる人種、とでもいえましょうか。科学技術の裏側には、科学者の信頼と友情、そして脈々と受け継がれる精神が流れているのです。そんな世界を、歴史に名を残した偉人たちの人生を語るのではなく、今もこの瞬間に地球のどこかで奮闘している科学者たちの姿を通して伝えたかったのです。
国境を越えて仕事するのも、本書のテーマに1つです。これからグローバル化が進み、世界に活動の場を広げる機会もますます増えそうですね。言葉の壁、文化の壁、ジョークの壁…生まれも育ちも根っこから違う人たちを一緒に生きるには、乗り越える壁がたくさんあって消耗することもありますが、わたしの(時には恥もてらいもなく)奮闘する姿が少しでもエールになれば、そして、もし「グローバルに仕事するのもイイかもね」と思っていただけたなら、これほど嬉しいことはございません。
空の旅の裏側で繰り広げられている、科学者や飛行機野郎たちの熱い奮闘劇。そんな舞台裏を覗きながら、航空管制科学の世界を、わたしと一緒に冒険してみませんか?『空の旅を科学する』-いよいよ9月5日(月)発売です!」
